常任委員会視察報告(愛媛県)

 令和8年5月12日から3日にわたり、天童市議会環境福祉常任委員会にて先進事例を学ぶため愛媛県今治市、東温市、松山市の3市4施設を訪れ先進的な取り組みを学ぶことができました。

 今回の視察では課題への取組みが「行政目線」の出発点ではなく、「利用する市民・ユーザー目線」による目標達成を目的とした課題解決への取組みとして多くの学びを得ることができました。

帰りの飛行機から工事中のモンテディオ山形の新スタジアム建設風景が見えたので思わず写真を撮影。なんとなくピッチや観客席の輪郭が見えてきましたね。

視察報告書

天童市議会議長 様

総務教育常任委員会
委員 半田 大介

日程視察先視察内容
5月12日(火)愛媛県今治市民設民営による「365日賑わうスタジアム」と地域交流拠点づくり
5月13日(水)愛媛県今治市保幼小中接続カリキュラムについて 小中一貫教育と教科担任制について
5月13日(水)愛媛県東温市窓口課視察報告・複数課の統合とユーザー目線による窓口改革
5月14日(木)愛媛県松山市松山スマイルウォーキング視察報告・市民の健康増進と参加意識を高めるウォーキング施策

報告事項

愛媛県今治市 アシックス里山スタジアム視察報告

民設民営による「365日賑わうスタジアム」と地域交流拠点づくり

1 視察の目的

 愛媛県今治市の「アシックス里山スタジアム」を訪問し、民設民営によるスタジアム整備・運営の考え方、またスタジアム施設を単なる競技施設にとどめず、文化・交流・地域コミュニティの拠点として活用している取り組みについて視察した。
 本市でもモンテディオ山形の新スタジアムの建設が始まり、試合開催日のみ集客する施設ではなく、日常的に人が訪れ、地域と人をつなぐ「365日賑わうスタジアム」というコンセプトに注目して視察を行った。

2 視察内容

 FC今治のホームスタジアムである本スタジアムは、スポーツ用品メーカーのネーミングライツにより「アシックス里山スタジアム」として運営されている。

説明では同スタジアムを「文化・交流拠点として地域と人を繋ぐ。365日賑わうスタジアム」と位置づけており、サッカーの試合がある日だけではなく、試合のない日にも人が集まる開かれた空間づくりを目指している。

 特徴的であったのは、スタジアムを「スポーツ観戦の場」としてだけではなく、市民の憩いの場、障がいを持つ方もスタッフとして働くカフェ、放課後等デイサービスなどの多様な施設設置、ドッグランなど、多様な市民が利用できる場所にしている点である。サッカーに関心のある人だけでなく、子ども、高齢者、子育て世代、障がいのある方、ペット連れの方など、多様な市民が自然に訪れることができる設計思想が感じられた。

 また、同スタジアムは「スタジアムを核に、新しい共助のコミュニティの実現を目指す」としており、施設整備そのものが地域のつながりづくりやまちづくりの手段として位置づけられている点が印象的であった。

現在も拡張工事中で、最初から完成形をつくるのではなく、徐々に理想に近づけていくアジャイル型の設計思想

3 所感

 これまでの公共施設整備では、「施設をつくること」や「イベント時に利用すること」が目的化しやすいが、アシックス里山スタジアムでは、施設を通じて人と人が出会い、地域への愛着や交流が生まれる仕組みが意識されていた。

 特に学ぶべき点は、敷地内において日常の中にある地域の居場所として整備している点である。スポーツ施設でありながら、散策コースや障がい者雇用のカフェ、放課後児童クラブ、地域イベント、健康づくり、子どもや家族の居場所など、複数の機能を重ねることで、利用者層を広げていた。

 本市においても、公共施設やスポーツ施設を「利用予約がある時だけ使う場所」と捉えるのではなく、日常的に市民が立ち寄り、交流し、健康づくりや地域活動につながる拠点として再構築していく視点が必要だと感じた。

4 本市への示唆

 本市でも、スポーツ施設、公園、道の駅、温泉街、観光施設、公共施設などを点として見るのではなく、周辺の飲食、観光、健康づくり、地域コミュニティ活動と結びつけることで、都市としての価値を高めることができるのではないだろうか。

 また、民間の発想や運営力を活かしながら、土地利用、制度設計、地域団体との調整、情報発信などで支える仕組みも重要である。民設民営の考え方は、財政負担の軽減だけではなく、民間の柔軟な発想をまちづくりに取り込む手法として参考になる。

 今後、私自身も、スポーツ・健康・観光・地域交流を一体的に捉えた拠点づくりを考え、多くの市民が日常的に集い、地域の賑わいを生み出す仕組みづくりを提言していきたい。


2. 愛媛県今治市役所

ネウボラ推進課視察報告・妊娠期から18歳までを切れ目なく支える子育て支援体制

1 視察の目的

 今治市役所において、ネウボラ推進課による子育て支援体制について視察した。今治市では、妊娠期から18歳までの子どもがいるすべての家庭を対象に、切れ目のない支援を行う「今治版ネウボラ」を推進している。

 本視察では、妊娠・出産・乳幼児期・就学期・思春期まで、成長段階に応じて支援が途切れない体制づくり、また子育て家庭が相談しやすい窓口づくりについて学ぶことを目的とした。

2 視察内容

 ネウボラとは、フィンランド語で「アドバイスの場所、相談の場所」を意味し、妊娠期から子育て期まで継続的に家庭を支える仕組みである。今治市では、従来の子育て世代包括支援センター、子ども家庭総合支援拠点、発達支援センターなどの機能をネウボラ推進課に集約し、子育てに関するさまざまな段階やケースに対して切れ目のない支援を行っている。

 特に重要であると感じたのは、支援対象を妊娠期から18歳までに広げている点である。子育て支援は、乳幼児期に重点が置かれがちであるが、子どもの成長に伴い、発達、就学、不登校、家庭環境、思春期、進路、虐待予防など、相談内容は変化していく。今治市の取り組みは、こうした変化に応じて、家庭がどの段階でも相談できる体制を目指している点に特徴がある。

 また、今治市では子育て情報ポータルサイトも整備し、子育て支援サービス、助成制度、相談窓口、遊び場、イベント情報などをライフステージや目的に合わせて検索できるようにしている。

3 所感

 子育て支援において重要なのは、制度の数を増やすことだけではなく、必要な人に必要な支援が届くことである。制度が多くても、保護者がどこに相談すればよいかわからなければ、支援にはつながらない。

 今治市のネウボラ推進課は、相談窓口や支援機能を集約し、家庭に寄り添う伴走型の支援を重視している点で、大変参考になった。行政側の部署ごとの都合ではなく、子育て家庭の不安や困りごとを起点に制度を組み立てている点が重要である。

 特に、妊娠期から18歳までを一体的に捉える視点は、本市においても参考になる。子育て支援は、母子保健、保育、教育、福祉、発達支援、家庭相談など複数部署にまたがるため、情報共有や連携が不十分であれば、支援の切れ目が生じる可能性がある。

4 本市への示唆

 本市においても、子育て家庭が「どこに相談したらよいかわからない」と感じることのないよう、相談窓口の明確化、情報の一元化、関係部署の連携強化が必要である。

 また、乳幼児期だけではなく、小中学生、高校生年代までを含めた子ども・家庭支援の体制を検討することが重要である。発達支援、不登校、ヤングケアラー、経済的困難、家庭環境の課題などは、年齢が上がるにつれて見えにくくなる場合もあるため、早期把握と継続的な支援体制が求められる。

 今後、本市でも、子育て支援を「申請を待つ行政」から「伴走しながら支える行政」へと転換し、妊娠期から子どもの成長段階に応じた切れ目のない支援体制の構築に活かしていきたい。


3. 愛媛県東温市役所

窓口課視察報告・複数課の統合とユーザー目線による窓口改革

1 視察の目的

 東温市役所において、スムーズな窓口対応を実現するために設置された「窓口課」の取り組みについて視察した。東温市では、「書かないワンストップ窓口」サービスに合わせて庁舎1階をリニューアルし、市民課を「窓口課」へ名称変更している。

 本視察では、複数課にまたがる手続きをできるだけ市民目線で整理し、来庁者の負担軽減と職員の業務効率化を両立する取り組みについて学んだ。

2 視察内容

 東温市では、来庁者がスムーズに目的の窓口に到達できる案内表示や、来庁者に配慮した受付カウンターの改善などを行っている。また、証明書発行手数料等のキャッシュレス決済、窓口課で取り扱う証明書の拡大、ライフイベントに伴う手続きへの対応など、市民の利便性向上に向けた取り組みを進めている。

 さらに、東温市は窓口DX実行計画において、「ユーザー本位のあたたかい窓口サービス」を掲げ、「東温市版書かないワンストップ窓口の実現」と「窓口DXの効果を高めるUX改善」を柱として窓口改革を推進している。

 特に印象的であったのは、単にデジタル技術を導入するだけではなく、来庁者の体験、すなわち「市民がどう感じるか」「迷わず手続きできるか」「何度も同じ説明や記入をしなくてよいか」という視点を重視している点である。

3 所感

 行政窓口は、市民にとって最も身近な行政サービスの入り口である。一方で、手続き内容によって担当課が分かれ、市民が複数の窓口を回らなければならない場面も少なくない。これは行政内部では合理的であっても、市民にとってはわかりにくく、負担の大きい仕組みとなる。

 東温市の取り組みは、行政側の縦割りを市民に感じさせないよう、横軸で手続きを整理し直している点に大きな意義がある。窓口課の創設は、単なる組織名の変更ではなく、職員の意識を「担当業務」から「市民の手続き全体」へ転換する契機になっていると感じた。

 また、窓口改革はデジタル化だけで完結するものではない。高齢者やデジタルに不慣れな方も含め、誰もが安心して手続きできるよう、案内、受付、職員対応、レイアウト、記入負担の軽減などを総合的に改善することが重要である。

4 本市への示唆

本市においても、市民が複数の課を回る手続きや、同じ内容を何度も記入する手続きがないかを点検する必要がある。特に、転入・転出、出生、死亡、結婚、介護、子育て、福祉など、ライフイベントに伴う手続きは複数部署にまたがるため、市民目線での再設計が求められる。

今後は、窓口業務を「各課の所管事務」として見るだけではなく、「市民が目的を達成するまでの一連の体験」として捉えることが重要である。そのためには、部署横断の検討体制、職員間の情報共有、業務フローの見直し、デジタル技術の活用を一体的に進める必要がある。

東温市の事例を参考に、本市でも、縦割り行政に横軸の視点を取り入れ、市民にとってわかりやすく、職員にとっても効率的な窓口サービスの実現できるように提言していきたい。

来庁目的に応じ、色分けされたサインボードや床の導線カラーを分けるなどの工夫も行われ、ユーザーフレンドリーな設計となっている。


4. 愛媛県松山市役所

松山スマイルウォーキング視察報告・市民の健康増進と参加意識を高めるウォーキング施策

1 視察の目的

 松山市役所において、市民の健康増進を目的とした「まつやまスマイル(笑顔)ウォーキングマップ」および関連する健康づくりの取り組みについて視察した。

 本視察では、市民が日常生活の中で無理なく運動に取り組める仕組みづくり、地域の魅力を活かしたウォーキングコースの設定、参加意識やモチベーション維持に向けた工夫について学ぶことを目的とした。

2 視察内容

 松山市では、松山市と松山市地域保健推進協力会が協同で、各地域の見どころなどを盛り込んだおすすめのウォーキングコースを掲載した「まつやまスマイル(笑顔)ウォーキングマップ」を作成している。

 同マップには、35地区のおすすめコースと、季節を感じる8コースが掲載されており、地域ごとの特色や見どころを楽しみながら歩くことができる内容となっている。

 この取り組みの特徴は、健康づくりを単なる運動指導として行うのではなく、地域の歴史、自然、景観、見どころと結びつけている点である。市民が「健康のために歩かなければならない」と義務感で取り組むのではなく、「地域を楽しみながら歩く」「季節を感じながら歩く」という前向きな動機づけにつながっている。

3 所感

 健康づくり施策では、参加者を一時的に集めることよりも、継続して取り組んでもらうことが重要である。ウォーキングは特別な道具や場所を必要とせず、幅広い年代が取り組みやすい運動である一方、継続のためには楽しさや達成感が必要である。

松山市の取り組みは、地域ごとのウォーキングコースを設定することで、市民が自分の住む地域や近隣地域を再発見する機会にもなっている。健康づくりと地域への愛着形成を同時に進めている点が大変参考になった。

また、地域保健推進協力会との協同により、行政だけでなく地域組織と連携して健康づくりを進めている点も重要である。市民の健康意識を高めるには、行政からの一方的な呼びかけではなく、地域の中で声をかけ合い、参加しやすい雰囲気をつくることが効果的である。

4 本市への示唆

 本市においても、市民の健康寿命延伸や介護予防の観点から、日常的な運動習慣づくりは重要な課題である。特にウォーキングは、子どもから高齢者まで取り組みやすく、地域の歴史や観光資源、自然環境と組み合わせることで、健康づくりと地域振興を同時に進めることができる。

 例えば、本市内の公園、温泉街、果樹園、歴史資源、将棋駒に関するスポット、商店街などを結び、地域別・季節別のウォーキングコースを設定することも考えられる。また、参加者が歩いた記録を残せる仕組み、スタンプラリー、スマートフォンアプリ、健康ポイント、地域イベントとの連携などを導入することで、継続的な参加意欲を高めることができる。

 今後、本市でも、健康づくりを医療・保健分野だけの施策として捉えるのではなく、観光、地域コミュニティ、商工、スポーツ、福祉と連携した総合的な取り組みとして展開することが重要である。松山市の事例を参考に、市民が楽しみながら健康づくりに参加できる仕組みを検討していきたい。


全体を通じた所感

 今回の視察では、3つの自治体・4施設に共通して、行政や施設の都合ではなく、利用する市民・来訪者の視点から仕組みを再構築している点が印象的であった。

 アシックス里山スタジアムでは、スポーツ施設を地域交流の拠点として活用し、今治市のネウボラ推進課では、子育て家庭に寄り添った切れ目のない支援を実現していた。東温市では、縦割り行政を市民目線で見直した窓口改革が進められ、松山市では、健康づくりを地域の魅力と結びつけ、市民が楽しく参加できる仕組みをつくっていた。

 これらに共通するのは、単独の事業ではなく、複数の分野を横断しながら、市民の暮らしの質を高めている点である。本市においても、スポーツ、子育て、窓口サービス、健康づくりをそれぞれ個別の施策として進めるだけではなく、地域づくり、交流人口の拡大、市民参加、健康寿命の延伸、行政サービスの向上と結びつけて考える必要がある。

 今回の視察で得た知見を、本市の政策提言や今後の一般質問、委員会活動に活かし、市民にとってよりわかりやすく、参加しやすく、暮らしやすいまちづくりにつなげていきたい。