会派先進地視察・岩手県3自治体を視察

公民連携・市民参加・鳥獣被害対策から学ぶ、持続可能な地域づくり
岩手県の紫波町、滝沢市、遠野市の3自治体を所属会派・てんどう創生の会で訪問し、それぞれの地域が抱える課題に対する先進的な取組を視察しました。
今回の視察は、
・紫波町の「PFI方式による庁舎整備とオガールプロジェクト」
・滝沢市の「自分ごと化会議」
・遠野市の「鳥獣被害対策と有害捕獲鳥獣埋設管」です。
紫波町――庁舎建設をPFI方式による民間協業

紫波町では、オガールエリアに整備された新庁舎と、PFIによる庁舎整備事業について説明を受けました。
紫波町の新庁舎は、民間事業者が設計・建設を行った後、建物の所有権を町へ移し、その後15年間の維持管理も民間事業者が担う「PFI・BTO方式」で整備されています。
PFI事業のBTO方式とは
民間事業者が施設を建設し、完成後に公共へ所有権を移転、その後もその民間事業者が維持管理・運営を行う方式です。
日本のPFI事業で最も多く採用されている代表的な仕組みBTO方式の仕組みと流れ
- Build(建設):民間事業者が自らの資金や技術で施設を建てます。
- Transfer(譲渡):施設が完成した直後に、所有権を国や地方自治体に移します。
- Operate(運営):所有権移転後も、民間事業者が一定期間、施設の維持管理や運営

PFI方式を導入した背景
PFIを導入した背景には、旧庁舎の老朽化や耐震性不足、庁舎機能の分散といった課題に加え、厳しい財政状況があったとのこと。建て替えには多くの費用がかかるので一度に多額の建設費を支出するのではなく、民間資金とノウハウを活用して財政負担を平準化(管理費や終戦費、賃料を民間の開発会社へ支払う方法)するとともに、設計から建設、維持管理までを一体的に考えることで、従来方式と比較して約6%の財政負担軽減が見込まれたとのことでした。
庁舎のあるオガールには、町役場だけではなく、図書館や保育施設、ホテル、飲食店、運動施設、住宅などが配置されていて、行政施設を核としながら、人が集まり、働き、暮らし、交流するエリア全体をつくることで、地域経済や雇用にもつながる循環を生み出していました。
公共施設を整備する際、「建物をどのようにつくるか」だけではなく、「その施設を中心に、地域にどのような価値を生み出すか」という視点が重要であることを学びました。
滝沢市――課題を「自分ごと」へ、市民の意識改革
滝沢市では、市民参加の新しい手法である「たきざわ自分ごと化会議」について視察しました。
天童市でも従来の議員との意見交換会などでは、参加者が毎年同じ顔ぶれになりやすく、市民から議会や行政への要望を聞く場になりがちでした。

滝沢市でも同様の課題を抱えていたとのことで、市民を無作為に抽出して参加案内を送り年代や性別の異なる市民が一つのテーマについて複数回話し合う「自分ごと化会議」を導入、令和6年度は「市の情報を得る手段とあり方」、令和7年度は「高齢者の移動手段」をテーマに、各年度4回の会議を開催されたとのことです。
会議では、最初から提案をまとめるのではなく、まず自由に意見を出し、課題を可視化し、その後、地域課題の解決に実際に取り組んでいる人を「ナビゲーター」として招き、先進事例を聞いた上でもう一度議論します。これによって、「行政が何とかするべきだ」という意見から、「自分たちにもできることがあるのではないか」という考え方へ変化していくことが、この取組の大きな特徴です。
最大の特徴としては、この会議でまとめられた市民の声が市長や行政に届く仕組みが整えられている事です。
「自分ごと」の意識が芽生えた
参加者の中には、会議をきっかけとして国勢調査員を引き受けた人、地域活動に参加した人、市の魅力を発信するSNSを立ち上げた若者もいたとのことで、単に市民から意見を聞くのではなく、市民が地域の課題を自分自身の問題として捉え、行動するきっかけをつくっている点に大きな意義を感じました。滝沢市ではこうした市民を毎年少しずつ増やすことが、本来の住民自治につながると考えているようです。
天童市でも、市長タウンミーティングや議会の意見交換会などが行われていますが、参加者の固定化や若い世代の参加不足は共通する課題です。
広く参加者を募集する方式だけでなく、無作為抽出、少人数制、具体的なテーマ、複数回の対話を組み合わせることで、これまで届きにくかった市民の声を把握できる可能性があり、今後天童市でも同じような取り組みができれば、より市民の声が反映されるのではと感じました。
また、この視察の後に会派でもこのような取組みを独自に行い、市民の声や課題を実際の声を聴く機会を定期的の設け、一般質問や担当部署へのヒアリングなどを行い、課題解決の進捗過程を可視化し、市民の皆さんにフィードバックできる取組みをやっていこうと話し合いました。
遠野市――捕獲後の処理まで考えた鳥獣被害対策

遠野市では、有害鳥獣対策と、捕獲した鳥獣を処理するための「有害捕獲鳥獣埋設管」について説明を受けました。
遠野市では、鳥獣による農作物被害が年間約1億円規模に上り、令和7年にはニホンジカが5,710頭捕獲されています。
捕獲数が増える一方で、大きな問題となっているのが捕獲後の個体処理とのことで、これまでは山中に穴を掘って埋めていたのですが、その作業は大きな負担となり、焼却施設へ運ぶ場合も、搬入できる大きさに解体する必要があるこのことで猟友会の負担も大きく、遠野市では大型の排管を地中に垂直に埋設し、その中へ捕獲したシカなどを投入する実証実験を行っていました。
管の中では、捕獲個体と発酵を促すボカシ肥料を重ね、自然分解によって減容させる方法で、捕獲個体を解体せずに投入できるため、猟友会や捕獲従事者の負担軽減につながっているとのことでした。また鍵付きの蓋で管理することで、クマによる掘り起こしや持ち去りを防ぐ効果も期待されています。
説明によると192頭を投入した実績があり、約1年間使用して休ませた後に管を引き抜いたところ、内部はほとんど皮だけの状態まで減容していたとのことで、臭いや水質への影響についても継続的に調査しており、現時点では大きな問題や苦情は出ていないものの、廃棄物処理法上の明確な判断基準がないことや、冬期間は山間部の埋設管を利用しにくいこと、すべての捕獲個体を処理できるわけではないことなど、課題も残されています。
埋設管は捕獲個体処理のすべてを解決するものではなく、山間部などでの処理を補う方法の一つとして位置付けられていました。
また、遠野市では、狩猟免許を持たない農家などが、わなの見回りや捕獲確認を行う「ニホンジカ捕獲応援隊」に参加しています。
捕獲そのものは有資格者が行いますが、地域住民が見回りなどを分担することで、猟友会の負担軽減と地域ぐるみの対策につなげています。
天童市でもクマやイノシシなどの出没が増加し、農作物被害だけでなく、市民生活の安全確保、捕獲従事者の高齢化、捕獲後の処理が課題となっています。
遠野市の取組をそのまま導入できるとは限りませんが、埋設管の設置条件、処理能力、環境への影響、法的整理などを調査し、天童市に適した処理方法を検討する必要があります。
3つの視察先に共通していたこと
今回訪問した3自治体は、それぞれ異なる課題に取り組んでいました。
紫波町では、行政と民間が役割を分担して公共施設と地域経済を支える仕組みをつくっていました。
滝沢市では、行政と市民が対話を重ね、市民を地域課題の解決に関わる主体として育てていました。
遠野市では、行政、猟友会、農家、民間事業者が連携し、鳥獣の捕獲から処理、ジビエ利用までを支える体制を構築していました。
共通していたのは、「行政だけで抱え込まない」という考え方です。
人口減少や担い手不足が進む中、これまでと同じ行政サービスを行政だけで維持していくことは、今後ますます難しくなります。
だからこそ、民間の資金やノウハウ、市民の知恵や行動、地域で活動する人たちの経験を結び付け、持続可能な仕組みへ変えていく必要があります。
また、最初から大規模な制度をつくるのではなく、現場の課題を明確にし、小さく試し、検証しながら改善する姿勢も重要です。
今回学んだ取組をそのまま天童市へ当てはめるのではなく、天童市が抱える課題や地域特性に合わせて、どのような形で応用できるのかを検討してまいります。
視察で得た知識を報告するだけで終わらせず、今後の議会活動や政策提言にしっかりとつなげていきたいと思います。

